英文法解説講座

英文法解説講座(第5回)

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衒学趣味の独学者

今回は前置詞を取り上げます。
形式上の特徴を説明したうえで、前置詞に何が表現できるのかについて考えていきます。

前置詞とは何か

見た目はどうか

前置詞とは、読んで字のごとく「前に置く詞(ことば)」です。
何の前に置くかといえば、たいていは名詞の前です。

We spent a few days in Tokyo.

‘in’ は前置詞で、’Tokyo’ という名詞の前に置かれています。

このとき後ろに置かれる名詞を前置詞の目的語といいます。そして、この【前置詞+名詞】をセットで前置詞句といいます。句とは2語以上の意味のまとまりのことです。

中身はどうか

① We used to play baseball in that park. (私たちはかつてあの公園で野球をしていた。)
② In my opinion, the movie was not very good. (私の意見では、その映画はそんなに良くはなかった。)
③ He picked up a book on the table. (彼はテーブルの上の本を手に取った。)

①は「公園で→野球をした」ですから、前置詞句は ‘play’ すなわち動詞を修飾しています。
②は「私の意見では→その映画は~だった。」ですから、前置詞句は後ろの文を修飾しています。
③は「テーブルの上の→本」ですから、前置詞句は ‘book’ すなわち名詞を修飾しています。

①②より、前置詞句は副詞のはたらきをする句であることが分かる。
③より、前置詞句は形容詞のはたらきをする句であることが分かる。

前置詞とは何か

前置詞は、後ろに名詞をひとつ目的語として引き連れて、前置詞句を形成する。
前置詞句は、基本的に形容詞あるいは副詞のはたらきをする。

前置詞で何を表現することができるか

前置詞は言葉と言葉とを意味的につなぐ

①では前置詞 ‘in’ が ‘play’ と ‘that park’ とをつないでいます。
②では前置詞 ‘in’ が ‘the movie was not very good’ と ‘my opinion’ とをつないでいます。
③では前置詞 ‘on’ が ‘a book’ と ‘the table’ とをつないでいます。
このように前置詞は被修飾要素と前置詞の目的語とつなぐのですが、どのような意味を付け加えてつなぐのでしょうか。

空間的な位置関係

the book on the table (テーブルの上の本)
the table on the book (本の上のテーブル)
play baseball in the park (公園で野球をする)
live in Osaka (大阪に住んでいる)

前置詞は、被修飾要素と前置詞の目的語との空間的な位置関係を表現します。
人間に限らず全ての物体は、空間においてでなければ、そもそも存在すらできませんから、この用法はたいへん重要でたくさん使用されることが分かると思います。

時間的な位置関係(前後関係)

I have to be home by 5 o’clock. (僕は5時には家にいなくちゃいけないんだ。)
What did you do after finishing school. (学校が終わった後、君は何をしていたの?)
Do you work in the evenings? (あなたは夜に働いているのですか?)

前置詞は、被修飾要素と前置詞の目的語との時間的な位置関係(前後関係)を表現します。
時間においてしか全ての物体は存在できませんから、この用法も数多く使われることはご納得いただけるかと思います。

その他の様々な抽象的意味関係

この意味は、前置詞の空間的・時間的な意味を元にして派生したものと考えられます。
前置詞 ‘on’ を例に派生の一例を検討します。

① I sat on the beach. (私は砂浜に腰をおろした。)
② We are having a party on Christmas Day. (私たちはクリスマスにパーティーをします。)
③ He is always acting on his mother’s advice. (彼はいつも母親の勧めに従って行動する。)

‘on’ の中心イメージは<接触・接すること>です。
①では ‘I’ は ‘the road’ ではなく ‘the beach’ に接しています。これは空間的位置関係です。

②では ‘have a party’ することが ‘New Year’s Day’ ではなく ‘Christmas Day’ に接しています。これは空間的位置関係ではありませんが、そのイメージを借用して表現された時間的位置関係です。

③では ‘act’ が ‘others’ advice’ ではなく ‘his mother’s advice’ に接しています。これも空間的位置関係ではありません。そのイメージを借用して、<根拠―行動>の抽象的意味関係を表現しています。母親のアドバイスに接して、つまり母親のアドバイスに基づいて、あるいは依存して、彼は行動する、ということです。

イメージを図にすると以下のようになります。汚くてごめんなさい。

前置詞との向き合い方

前置詞の中心的イメージを理解し、辞書に掲載されている用法を先ほどの3つの意味関係に分類してみましょう。前置詞の用法は、空間的意味→時間的意味→抽象的意味というように派生していくものと整理するとたいへん身につきやすくなります。次に、イメージや用法の似ている前置詞を比較して、それらがどういう点で異なっているのかを理解しましょう。使い分けの視点を得られれば、英作文でも迷うことはなくなるでしょう。

まとめ

前置詞は、後ろに名詞をひとつ目的語として引き連れて、前置詞句を形成する。
前置詞句は、基本的に形容詞あるいは副詞のはたらきをする。

前置詞は、被修飾要素と目的語とを意味的につなぐ。その意味は3つに大別される。
①空間的位置関係
②時間的位置関係
③抽象的意味関係
前置詞の中心的(空間的)イメージを元に各用法を理解することができる。

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