SV・SVCとSVO・SVOO・SVOC
自動詞と他動詞
第1文型・第2文型(SV・SVC)と第3文型・第4文型・第5文型(SVO・SVOO・SVOC)との分水嶺は、動詞が自動詞、他動詞いずれのはたらきをしているかである。
では、自動詞とは何か、他動詞とは何か。意味の観点からすると、自動詞とは自分ひとり(動作主単体)で行為が完結する動詞のことであり、他動詞とは自分ひとり(動作主)単体では行為が完結せず、後続にその行為の対象がなければならない動詞である。形の観点からすると、自動詞の直後に目的語はないが、他動詞の直後には目的語があるということになります。たとえば’sleep’(眠る)の場合はどうだろうか。眠るという行為に対象は存在するだろうか。たとえば’go’(行く)はどうだろうか。行くという行為に対象は必要だろうか。
②This hotel sleeps 300 guests. (他動詞)
③He goes to school. (自動詞)
④He goes a different way. (他動詞)
ごく一部の例外を除いて、英語の動詞には自動詞と他動詞両方の用法がある。すなわち、その動詞をどのような意味で使おうとしているかによって、それが自動詞になるか、他動詞になるかが決まるのである。無論、’sleep’も’go’も自動詞で用いられることのほうが圧倒的に多い。辞書を見ればそれは明らかである。しかしだからといって、’sleep’は自動詞であると説明するのは不正確で、自動詞として用いられているとするのが正確な理解であろう。このように自動詞であるか他動詞であるかの判断は、一個一個の文ごとに判断せざるを得ない。重要なのは、動詞の直後に目的語となる(補語ではない)名詞があるかどうかを見極め、その一文を「OをVする」と解釈して意味が通るかどうかを検証することである。②は「このホテルは300人の客を眠らせる(このホテルは300人が泊まれる)」と解釈でき、④は「彼は別の道を行きました」と解釈できるのである。(大切なことは知っているつもりの動詞であっても、自動詞か他動詞なのかを決めつけてしまわずに、辞書を引くことです。)
自動詞という動詞あるいは他動詞という動詞が存在するわけではなく、自動詞・他動詞は動詞の使い方に着目したときになされる分類である。自動詞は「SはVする」・「SはCである」という意味になるように動詞を使う場合であり、他動詞は「SはOをVする」という意味になるように動詞を使う場合である。(その使い方はいちいち辞書に訊ねなければならない)
その動詞の直後に目的語となる名詞があり、かつ「SはOをVする」と解釈できる場合、他動詞である。直後に目的語となる名詞がなく、「SがVする」と解釈して意味が完結する場合、完全自動詞である。同様に「SはCである(S=C)」と解釈できる場合は、不完全自動詞である。
もう一例考えてみよう。
この飛行機は東京へ行きます。この英文は誤っているのだろうか。誤りと思しきものを訂正することは容易い。しかし、論理的にこの英文の誤りを説明することは難しいと私は考えています。’go’は「行く」という意味である。そのとき、行き先、すなわち行為の対象は、それがなければ「行く」という動作は成立しえないのだから、必然的・本質的に要求される。文脈上明らかで行き先を明示する必要がない場合を除いて、行き先を明示するのであれば、それは文の要素たる目的語として表現されるのではないか。仮にこのように論じられたとき、私は前々回以来の、文の要素とは文意が成立するために要求される本質的・必然的意味の要素である、という説明を撤去しなければならないだろうか。
しかしながら、ことはそれほど単純ではない。ここで’go’の本質的意味を探究(といっても辞書を引いたにすぎないが)してみようと思う。
‘go’は話し手の方でも聞き手の方でもない「他の場所へ行く」ことを表している。(浅野博編『アドバンスドフェイバリット英和辞典』東京書籍、2002年、p. 794)ここからは、’go’という動詞のなかにその行き先(といっても不確定だが)、すなわち行為の対象が既に含まれているとみることもできるし、とにかく話し手の方でも聞き手の方でもない場所に行けばよいのであるから、その行き先は必然的には要求されていない意味の要素とみることもできるだろう。’go’を自動詞として用いるとき、「行き先はともかくどこかへ行く(移動性)」という意味になると考えられ、意味の焦点が行為そのものに当たるために、行き先(行為の対象)は文の本質的要素とはならず、あくまで修飾要素となるのである。ここでお話している本質的な疑問は、対象のない行為など存在するのかということである。
・自動詞の意味のなかに既に行為の対象が含まれているから(ex. smoke)
・行為それ自体に意味の焦点が当たっており、行為の対象は必然的に(その明示が)要求されないから(ex. talk)
ここまで検討すると、自動詞・他動詞は見かけ上、すなわち形式的に目的語があるかないかという区別であり、実質的(意味的)には両者は大きく異なるものではないと考えてよいだろう。そうであるとすれば、先ほどの
これも意味をなす英文となるだろう。意味さえ伝わりさえすればよいという立場に立てばの話ですが。意味を伝えるということと文法的規則に従うということの関係性は別の記事で機会があればお話ししたいと思っています。
SVO・SVOO
動詞が他動詞として用いられるとき、その英文は第3~5文型のいずれかになる。第3文型は目的語をひとつ要求し、第4文型は目的語をふたつ要求するものである。この違いはどこから生ずるのか。第4文型をとる’give’を考えると、これは与えるものと与える相手を必然的に要求する動詞でしたね。この’give’のように、目的語をふたつ取り、「与える」という意味を含む動詞のことを授与動詞といいます。「与える」という意味を含むからこそ、必然的に目的語をふたつ取るのである。
SVOC
第5文型のとき、文は「SはOをCにする」という意味になる。このとき<O=C>という関係が成り立つ。
②You make me happy. <O=C>
①のように主語を説明する補語を主格補語、②のように目的語を説明する補語を目的格補語という。また、補語を必要としない他動詞を完全他動詞、必要とするものを不完全他動詞といいます。SVとSVCとの関係は、SVOとSVOCとの関係とよく似ていると理解できるでしょう。SVOCの文例をいくつか見てみましょう。<O=C>となっているのを確認してください。
He made me angry.(彼は私を怒らせた。)
She keeps her house clean.(彼女は自宅をきれいにしている。)
Don’t leave the door open.(ドアを開けたままにしないで。)
英語の前置詞と日本語の格助詞
②I played baseball in the park yesterday.
③He gave her a ring.
④He gave a ring to her.
⑤彼は彼女に指輪をあげた。
⑥彼は指輪を彼女にあげた。
格助詞は語と語との関係を示す言葉で、①でいうと「で」「を」です。①の「公園で」の「で」は’in the park’の’in’で表現されていますが、「野球を」の「を」はどうでしょう。これは’I played baseball’という文型で表されています。さらにいうと、’Baseball played I’では意味が通じませんから、語順で表されているということもできるでしょう。⑤・⑥のように日本語は格助詞が発達していますから、比較的語順は自由です。しかし、英語は一部の例外を除いて基本的に文型通りの語順の拘束を受けます。④のように前置詞が日本語の格助詞に対応する場合もあります。
5文型で表現できること
②SVC:SはCである<S=C>
③SVO:SはOをVする
④SVOO:SはOにOをVする
⑤SVOC:SはOをCにする<O=C>
5W1Hに当てはめると、5文型で表現できることは、’WHO’ ‘WHAT’ ‘WHICH’だけであり、’WHEN’ ‘WHERE’ ‘WHY’ ‘HOW’は修飾要素によって語られることになります。5文型は、文を観察する上でなくてはならない観点ですが、実際の英文は多岐にわたる修飾要素に彩られており、5文型を理解したからといって英文の構造を見抜けることができるわけではありません。次回以降は、この修飾要素を順次検討していきますが、その際常に気を払っていただきたいことは、修飾要素は必ず何かを説明しているということである。その修飾要素が何をどのように説明しているのかという問題意識を常に持っていてほしいです。