to不定詞の非動詞的特徴
文法上の主語・意味上の主語
主語とは、動作・行為・状態の担い手(動作主)を表す語である。この主語をさらに分析すると、文法上の主語・意味上の主語という範疇が浮かび上がってきます。
You run in the park.(あなたは公園を走る。)
(You) Run!(走れ!)
上記の例のような場合、文法上の主語と意味上の主語は一致します。これが普通です。
しかしながら、to不定詞(to do)には文法上の主語は存在しません。
② He has something to tell you.(彼は君に伝えたいことがあります。)
‘to become’ にも ‘to tell’ にも文法上の主語は存在しないことはご納得いただけるでしょうか。
ですが、to不定詞には意味上の主語は存在します。①②においても文意から容易に発見できるはずです。
①の ‘to become’ するのは勿論 ‘I’ですし、②の ‘to tell’ するのも勿論 ‘He’ です。
この場合はどうでしょうか。’to walk’ するのは一体誰なのでしょうか。男なのか、女なのか、子どもなのか、お年寄りなのか、はたまた人間なのか、動物なのか、判然とはしません。おそらくは一般の人々が意味上の主語と理解できるでしょう。
重要なことは、to不定詞を用いているときに、’to do’ の主語というものが話者のなかで必ずしも明確に意識され、言葉に表現されるわけではないということです。これはto不定詞のたいへんなメリットです。動詞を使うたびに、常にいちいち主語を置かなければならないとすれば、それはとても面倒なことです。
② He has something he to tell you.
③ It is good people to walk.
to不定詞は動詞を主語なしで表現することができるのです。しかしながら、常に主語なしで表現してよいわけではありません。それはto不定詞の意味上の主語を明示しなければならないときがあるということです。そのときというのは、明示しなければ相手に伝わらないときです。そして、その明示の仕方は、’to do’ の前に ‘for A’ と置くのです。たったそれだけのことです。
to不定詞は文法上の主語から解放されているのです。
次回は、to不定詞が時制表現から解放されていることをお示しします。