偏差値って何?
偏差値とは、ある値(例えばテストの点数)が母集団(たとえばクラスのみんなの点数)に対してどれくらいの位置にあるのかを示すもので、高いほど上位にいることが分かります。そして、「50」ならば丁度平均なのが分かります。 さすがにこの辺の話は皆さんもご存知だと思います。では、「偏差値65」とか「偏差値70」とかにはどのような違いがあるのでしょうか。この話に移る前に、さくっと偏差値の求め方を説明しましょう。偏差値を求めてみよう!
まず、偏差値を出すためには、平均値の出し方と同じく「全部の値」を分かっている必要があります。定期考査で学年全体に対する自分の偏差値を出すためには、学年全員の点数を集める必要があります。だからこそ、試験の偏差値はテストを主催する人(進研模試ならベネッセとか、定期試験なら担当の先生とか)しか求められないのですね。 さて、ここであなたは友達4人の数学の点数を聞き出したものとして、あなたを含む5人の中でのあなたの偏差値を求めてみましょう。| あなた | A君 | B君 | C君 | D君 |
|---|---|---|---|---|
| 80点 | 90点 | 60点 | 76点 | 74点 |
Step1: まずは平均を求める
偏差値は「自身と平均の差」に重きを置いた指標です。まずは、指標の基軸となる平均値をちゃちゃっと求めましょう。
平均値
= (80点 + 90点 + 60点 + 76点 + 74点) / 5人
= 380/5
= 76
Step2: 平均の差(偏差)を2乗する
「誰かの点数-平均」を求めて、これを2乗します。5人全員に対してそれぞれ求めてくださいね。
あなた: (80点 – 76)^2 = 4^2 = 16
A君: (90点 – 76)^2 = 14^2 = 289
B君: (60点 – 76)^2 = (-16)^2 = 256
C君: (76点 – 76)^2 = 0^2 = 0
D君: (74点 – 76)^2 = (-2)^2 = 4
この値は、最後に2乗を伴っているので、必ず0以上の値をとります。そして、良くも悪くも平均から離れているほど(差の大小が極端なほど)大きい値になります。
Step3: 2乗の平均を求める
上で求めた値の平均値をとります。やり方はStep1と同じですね。
差の二乗の平均値
= (16 + 289 + 256 + 0 + 4) / 5
= 565 / 5
= 113
ちなみに、この値のことを分散と呼びます。この値が大きいほど、平均値からのデータ全体のかけ離れ具合(データの散らばり具合)が大きいと言えます。
Step4: 2乗の平均の、正の平方根(ルート)を求める
これは電卓必須ゾーンです。上で求めた2乗の平均値(分散)について、正の平方根をとりましょう。
√113 = 10.63…
この値のことを標準偏差と呼びます。値が示す意味は分散と同じですが、偏差値を求めるためにはこれを使います。(次元ってものを合わせるためですが、理由を深く考える必要はあまりありません)
標準偏差ならば、模試を受けた1か月後くらいに貰える、集計結果をまとめた冊子に平均点と一緒に掲載されていることがあります。
Step5: 次の式を埋める
点数と平均点の差を標準偏差で割って、これに10を掛け合わせた上で50を加えます。式にすると次の通り。
この式を用いると、あなたの偏差値が次の通り導き出せてめでたしめでたしです。
あなたの偏差値
= (80点 – 76) / 10.63… × 10 + 50
= 4 / 10.63… × 10 + 50
= 0.38… × 10 + 50
= 53.8…
この式の肝は「(点数ー平均)÷標準偏差」という部分です。「点数ー平均」が大きいほど、この値は大きくなるのですが、標準偏差が大きい(点数が分散している)と小さくなってしまいます。つまり、偏差値は、自分の点数を平均からずば抜けさせると高くなりますし、自分以外のみんなが偶然平均周りの点数をとってくれる(点数がバラけていない)場合も高くなります。
ちなみに、10を掛けて、50を加える部分に数学的な深い意味はありません。10を掛けることによって、値そのものが大きくなります(つまり他の人との差も増えて比較しやすい)し、最後に50を加えることで、平均ぴったりの値を取った人の偏差値が「50」になって、なんとなく分かりやすくなります(0が中心でいいじゃんって人もいると思いますが)。
偏差値が強い時と弱い時
偏差値が強いとき
偏差値が大きな役割を果たせるようになるのは、全体の分布が次のような感じになっているときです。
これは「正規分布」と呼ばれる分布の形なのですが、簡単に言えば、「平均に集中していて、平均から離れるほど、個数が少なくなる」「グラフの左右が平均を軸に対称になっている」ような形です。試験で言えば、平均点周りの点数を取る人がもっとも多く、平均から離れるほど、良い点数の人も、はたまた悪い点数の人も同じくらい少なくなるような状況を表します。
このような得点分布をする場合、受験者の「偏差値」は、「上位何%なのか」を的確に表してくれます。
例えば、上のような分布で偏差値70を獲得すると、上位2%くらいに位置しているということができます。逆に、偏差値40を取った人は、左右対称な形から「下位」15.8%くらいの立ち位置にいることが分かります。「偏差値→全体に対する立ち位置」に直接繋がるのは便利ですね。
ちなみに、受験者数が十分に多い模試では、得点の分布が上のグラフの形に近くなることが知られています。したがって、模試の全国偏差値は立ち位置の目安としておおよそ活用できると言えます。
偏差値が弱いとき
ただし、「偏差値→上位何%なのか」に繋がるのは先ほどのような綺麗な形の分布の場合に限ります。受験者数が圧倒的である全国模試では、大抵このような分布になりますが、例えば、受験者数が少ない場合(集計対象者数が少ない場合)や、問題の難易度設定が不適切な場合、試験の得点分布は必ずしもこんなに上手くいきません。 例えばこんな分布の時は偏差値があまり意味を持ちません。
優しい先生の定期試験にありがちな、やたら平均点が高い例です。「復習すればできる問題」を出題する定期試験では、勉強をした生徒が高得点層に集中し、平均が満点に近づきます。平均点〜満点の間の幅が狭くなり、この幅にたくさんの生徒が集まる一方で、勉強をしない一定の層が相変わらず0点〜平均点の広い幅にまばらに分布するので、グラフが非対称になってしまい、対称なグラフが前提である「偏差値=上位%」の図式が成り立たなくなります。
これは難しい数学の問題にありがちな例です。数学の問題には、初見では超難しいものの、一度解き方を知ると案外すんなりと解ける例があります。そんな問題がたくさん出題された時、数学の経験が浅い人たちはあっけなく撃沈する一方で、数学を解きまくってる経験豊かな一定層は意外と高得点を獲得しちゃいます。そんな「二極化」が生じた場合、「平均から離れるほどに数が減るグラフ」という前提が崩れて偏差値から母集団の具体的な位置を正しく導けなくなります。







