
世界は何も答えない
自分の心に耳を当てたことのある人ならお分かりいただけるだろう。世界はとても静かである。自然は何も語らないからである。人間はとかく喧しい。決まって内向的な人間は何事かに打ち込む。自分ひとりで自然と向かい合わせに座っているのが、静かで心地いいからである。勉強もまた内向的な人間の修練の場になっているように思われる。勉強はみんなと一緒にできるのだろうか。勉強はあくまで一人でするもの、徹頭徹尾個人的な営みと私は思う。みんなで協力して勉強するといえば、聞こえはよいが、それは個人個人がある程度勉強したうえで成立することであるし、勉強会の後、復習するのは個人ということになろう。
受験勉強をはじめ勉強は、人間を内向化するはたらきがある。受験期間はエネルギーを充電・吸収する期間であって、それをむやみに発散してはならない。それでは普通の人である。外向的であっては受験生は務まらないのである。内向とは、ありとあらゆる矛先を内側に向けるということであり、それは自己の醜さ、未熟さを突き付けられ続ける過程である。一度習ったはずのことがもうできなくなっている。昨日覚えたばかり単語をもう忘れてしまっている。自己を真っ先に非難する者が自己自身であるとき、あなたは内向的になっている。これほど辛いことはないが、これほどに心強いカウンターパートはいない。彼との内面における議論をほっぽり出さずに、誠実にダイアログを積み重ねていくことができれば、より強靭な精神を手にすることになるだろう。
これに対して、人間が外向的でありすぎると、自己の内面に気が付かないでいる。彼は外ばかり見てしまっているのである。彼は答えが外にあると思っているから、答えが与えられるものと勘違いしている。遺伝的にも環境的にも誰ひとりとして同一の人間は存在しないのであるから、同一の回答もまた存在しない。外側には普遍的に当てはまる抽象的な回答しか存在しえないことは論理的にも明らかであろう。世界は何一つ教えてくれない。
いちど、自分の内側を覗いてみてほしい。なぜ成績が上がらないのか、なぜその大学でなければならないのか。たったの数問で君の人生に何の意味もないことに気が付くであろう。しかし生きるとは、その無価値を自覚して、それに耐えることであると私は思う。いや、それに耐え抗うことであると思う。無意味さや思い通りにならないこと、不如意に抗い続けてほしい。そのとき闘争のなかで感じる、太陽、風、汗のしたたりはすべてみな君の味方をしてくれているような幸福を知るだろう。
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