過去の連載記事
おともだちの紹介

論理の国の友だち
何事においても論理の厳密さに重きが置かれるロジカルネーションの民であり私の友人。論理の国は一見すると遥か彼方の国家のように思えるが、受験を超えた先に待っている意外と身近な世界なのかも知れない。
織田信長は幕府を開くならば幕府は1000年続く?

おっぐ
ねぇ、論理の国の「あるある」を教えてよ。

論理の国の友だち
「あるある」かい?論理の国には日本語で言う「あるある」こそあまりないけど、「必ず成り立つ」って意味を持つ次のような”ことわざ”があるよ。

おっぐ
ほう。どんな”ことわざ”なの?

論理の国の友だち
それはね。「信長は幕府を開くならば幕府は1000年続く」って”ことわざ”なんだ。

おっぐ
なにそれ、絶対無理でしょ(笑)

論理の国の友だち
なんでだよ。絶対ことわざの通りでしょ!!

おっぐ
いくら信長が名武将とはいえ、末代までその叡智が引き継がれるとは限らないし、何より19世紀以降の世界的な近代化の中で日本だけが「幕府」とか言う中世的な統治機構でやっていけるわけないでしょwww

論理の国の友だち
そりゃもちろん、信長とはいえ1000年続く幕府の土壌を作れるとは僕には思えない。でも、この”ことわざ”そのものは絶対にそうだと断言できるんだ。

おっぐ
(”ことわざ”の仮定からめちゃくちゃなのになに言ってんだ…)
仮定がめちゃくちゃなら絶対に成り立つ!?
さて、ある”ことわざ”をキッカケに意見の対立が起きましたが、実は、この”ことわざ”は命題としては「真」つまり成り立つと判断できるものなのです。 まず、「ならば」を含む命題の真偽についておさらいしましょう。
AならばB

論理の国の友だち
これは、例えば「x=1ならばx2=1」みたいな命題のことだよ。
「ならば」の両辺(x=1とx2=1)もまた命題になっていることに注意!

論理の国の友だち
命題「x=1ならばx2=1」について、「x=1」が真である(実際にxが1である)場合、「x2=1」も真だから、命題は真だと言えるんだ。

論理の国の友だち
命題「織田信長は幕府を開くならば幕府は1000年続く」ってのは、織田信長は幕府を開いていない事実から左側が「偽」と評価されるから、命題は絶対に真ってわけさ。
「AならばB」の真偽について…
Aが「真」ならば、「B」の真偽と同じ
Aが「偽」ならば、絶対に「真」
なんでこんな決まりになってるの?
成り立たないことを仮定するのは一見すると無意味な気がしますが、それでもAが偽の場合に「AならばB」の真偽を判断できるのは、次の複雑な命題を考えることで理解できると思います。
「(『Aは真』ならば『Bは真』)かつ『Aは真』」ならば「Bは真」

論理の国の友だち
え、わけわからない?まあ、ゆっくりと見ていこうや。
(常に偽の命題)ならば「Bは真」
という形になります。ここで、先ほどの議論からこの命題は常に真であると言っていましたよね?
Bが真ならば、「(常に偽の命題)ならば(常に真の命題)」に、Bが偽ならば「(常に偽の命題)ならば(常に偽の命題)」の形になるのですが、両者は共に「真」であることが言えているのですから、よって、「ならば」の左側が偽ならば、その真偽は常に真であると言えるわけです。

論理の国の友だち
ちなみに、「偽ならば〇〇」の命題は、対偶をとってその真偽を比較すると真偽が揃って整合性があることを確かめられるよ!
おわりに
今回は、「ならば」を含んだ命題で、命題の仮定が成り立たない(偽である)場合に命題が絶対に真になる話を説明しました。このルールも日常的な直感とは少し異なるものですので、論理を操る際は注意してくださいね! 本連載は、論理の国の友達が母国に帰るそうなので、これをもっておしまいにしたいと思います。本連載を通じて、論理のルールを改めて再確認していただけたなら嬉しいです。
論理の国の友だち
またいつかどこかで会おうね!