こんにちは、京大A判おっぐです。
日本語と数学の論証用語の間にある意味の違いを説明する「論理の国シリーズ」も3回目になりました。
友達の帰国に伴い、本連載は今回で最後になります。最後に飾るのは、「ならば」で繋がる命題の真偽についてのお話です。
織田信長は幕府を開くならば幕府は1000年続く?
仮定がめちゃくちゃなら絶対に成り立つ!?
さて、ある”ことわざ”をキッカケに意見の対立が起きましたが、実は、この”ことわざ”は命題としては「真」つまり成り立つと判断できるものなのです。
まず、「ならば」を含む命題の真偽についておさらいしましょう。
「ならば」の両辺(x=1とx2=1)もまた命題になっていることに注意!
まず、「AならばB」の「A」の命題が真の場合、「AならばB」の真偽は、「B」が真であるかどうかによって変わります。もちろん、Bが真ならば真ですし、Bが偽ならば偽となります。
では、「Aの命題」が偽ならばどうなのでしょう。日常生活では、ありえない仮定(絶対に成り立たない仮定)を考えることすらありませんが、論理の世界にはしっかりと決まりがあります。
ズバリ、Aが偽なら「AならばB」は絶対に真になるのです。
Aが真の場合とは異なり、Bが真だろうが偽だろうが、「AならばB」は真になります。これは直感に大きく反する結果ですよね。
以上をまとめると、次のようになります。
Aが「真」ならば、「B」の真偽と同じ
Aが「偽」ならば、絶対に「真」
なんでこんな決まりになってるの?
成り立たないことを仮定するのは一見すると無意味な気がしますが、それでもAが偽の場合に「AならばB」の真偽を判断できるのは、次の複雑な命題を考えることで理解できると思います。
さて、この命題が言いたいことは、「『Aは真』ならば『Bは真』」って命題が成り立つ上に、さらに「Aは真」も成り立つならば、「Bは真」になるよねってことです。この命題、当たり前のことを言ってるだけで、当然ながら絶対に成り立ちますよね?つまり、常に真であると言えます。
では、(『Aは真』ならば『Bは真』)かつ「Aは真」の部分の真偽はどうでしょうか。少なくとも、Aが偽であるならば、Bの真偽に関わらず、この命題は「偽」となります。なぜなら、かつ「Aは真」とある以上、Aが偽なら絶対に偽となるからです。
ところで、Aが偽であるならば、最初の命題は
という形になります。ここで、先ほどの議論からこの命題は常に真であると言っていましたよね?
Bが真ならば、「(常に偽の命題)ならば(常に真の命題)」に、Bが偽ならば「(常に偽の命題)ならば(常に偽の命題)」の形になるのですが、両者は共に「真」であることが言えているのですから、よって、「ならば」の左側が偽ならば、その真偽は常に真であると言えるわけです。
おわりに
今回は、「ならば」を含んだ命題で、命題の仮定が成り立たない(偽である)場合に命題が絶対に真になる話を説明しました。このルールも日常的な直感とは少し異なるものですので、論理を操る際は注意してくださいね!
本連載は、論理の国の友達が母国に帰るそうなので、これをもっておしまいにしたいと思います。本連載を通じて、論理のルールを改めて再確認していただけたなら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!